追悼釣行

最終更新: 6月14日


3月7日


西伊豆は曇天、そして雨。

時折吹き付ける強い風もあり体感温度は5℃に満たない。


相棒がいなくなってから一年、今日まで彼を忘れた日は一日もない。

毎日ふわりと頭の中に浮かんでは消え...

どんだけ寂しがりやなんだ!と呟けば、それは自分自身の寂しさなんだと気づかされる。


あれからずっと行く気になれなかった釣りだけど、この日は命日。

あいつの大好きだった釣り場へと車を走らせた。


久し振りの西伊豆ドライブ。

道路が狭くアップダウンとカーブの連続。

小高い山から望む絶景は、どの目薬よりも効き目がある。


僕らの聖地は、とても小さな、本当に小さな漁港にある。

その入り口に立て看板が置いてあった。


”漁業関係者以外立ち入り禁止”


コロナの影響だった。

高齢の漁師が港内で作業していたので声をかけた。


「親友が大好きだったこの港で供養させていただきたい」


漁師は僕を見つめたあと一言


「いいよ」


それだけ言って立ち去った。

いつも二人でここにいた。

消波ブロックの向こうから


「ヒーット!!」

「剛!タモ持ってこい!」


空耳...

僕の頭の中では、大声で叫んでいるあいつがいた。

釣りの後、ビールジョッキをぶつけ合って喉を潤した。

今はそれは出来ないが... まぁ呑めよ相棒。


聖地を後にし、いつか行こうと話していたポイントに移動した。


「荒々しい自然が剥き出しで、大きな石が海に突き出ているんだ」


記憶している彼の言葉を頼りに、足場の悪いゴロタ場を慎重に歩いた。

崖から落石があっても不思議ではない。

なるべく崖下を避けながら進む。

大きな石が見えてきた。

はやる気持ちを押さえ、落水しないように石に飛び移る。

荒々しい風景、そこには絶景が広がっていた。

早速竿に糸を通し、この日の為に作ったオモリをセットしてサンマの切り身を針につける。

安く譲ってもらった赤サーフとベーシア45QDⅡを握り渾身の力でぶん投げる。

30号の自作オモリは飛距離を伸ばし着水、そして着底。

スカッとした。


この日まで釣りをしなかったことを悔やむくらいに気持ちが良かった。

竿先を眺め、いつになっても釣れる気配がなくても釣りは楽しい。

再び自然の中に存在する自分が嬉しかった。


竿先が小刻みに反応している。

合わせを入れて一気に引っこ抜く。

重い...

これは間違いなく招かれざる客、ウツボ。

再び竿先に反応!

残念ながらアカハタではなかったけど、大きなベラが釣れた。

このベラ、僕の中では高級魚。

煮付けにすると驚くほど旨い!

相棒がリリースする前に、僕はいつもそれをクーラーボックスに入れて持って帰った。


昼飯を食べ、海を眺め、空を仰ぐ。


あいつがいたらな...


そればかりが繰り返し頭の中にあった。

「次は青物をかけねえと」


いなくなる3週間前に掠れた小さな声であいつが僕に言ったこと。

だから今年の目標は青物を釣り上げる。

他にも出された宿題はいっぱいある。

何年かけても達成できるか分からないような難題も...

だから、まだまだあいつと一緒に釣りをしている気分だ。

結局、狙ったアカハタ は姿を見せてくれなかった。

「釣れたからまたあそこに行こう!」が理想だけれど「釣れなかったからまたあそこに行こう」が圧倒的に多い僕の釣り。

来年の命日は、二人で大島釣行を計画しながら叶うことのなかったので大島遠征も良いかもしれない。


まだまだ近くにいる気がするぞ相棒!

人生、不思議なもんだな。


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